採用における「小さな経済」

週報キクミルというブログがあります。
その中の、ある眼鏡屋さんを紹介するブログを読みました。
https://thirayama0227.goat.me/3CEmuPjY
大きく稼ぐことよりもそこに来る人を大切にし、そこで生まれるコミュニケーションから
小さい経済が始まる、ということを素敵な文章で伝えてくれます。
 
眼鏡屋さんの店主さんの言葉にはっとくるものがありました。
 
「服を選んで手にとるでしょ。その時に色違いもありますよ、と話しかけてくる店員さんは売上のことしか頭にないから、その人からは100%いいものは紹介されませんよ」
 
自分もかつて百貨店の売場で販売の仕事に携わっていた経験があります。
「色違いもございますよ」という言葉を使ってしまったこともあります。
それだけでなく、現在関わっている「人材紹介」という仕事のなかで、似たような言葉がどれだけ出回っていることか。
「他にもいい仕事ご紹介しますよ」「その条件ならたくさん人が集まりますよ」と。
 
先日も、人材データベース(いわゆる転職サイト。転職希望者が登録し、人材紹介業者はそこから人を探す)の担当者から「こうすればエントリーが高くなる。応募が集まる求人の共通点」なる資料をもらいました。
 
並んでいる言葉は「検索しやすいワードを設定する」「雇用企業名は公開する」「職種名は〇文字以内」「スカウトは月〇件打ちましょう」といったもの。
 
それらは「応募が集まる求人の共通点」ではなく、応募率を高めるためのテクニックでしかありません。
 
大量生産の服を、量販店で売るのと同じ。
そこには個人の顔はなく、データがすべてです。
もちろん、求人企業側が望むケースもあるでしょう。
年齢や性別、はたまた体力がありそうか否かで判断し、大量に採用したい場合もあります。
 
でも、たったひとつのポストをたったひとりのために募集することもある。
いや、何人採用しようとも、本来はその中の一人のために募集というものはあるべきだと思います。
 
そこに必要なのはノウハウではありません。
応募数は求人内容そのものに左右される。
そもそも応募数を問題にしてはいけない。
たったひとりのいい人に巡り合えればいい。
 
簡単な真理です。
テクニックを駆使すれば、応募数は確かに増えるかもしれません。
でもいい人に巡り合えるかは別の話です。
 
本来、エージェントがやるべきことは、
企業側も、働く側も、双方が幸せになるよう、仲をとりもつことだと私は考えています。
何のために、どのような方に入社してもらいたいのか、企業側ととことん話し合うこと。
こうすれば応募が増える、ではなく
人的資源の活用によってどのように企業の課題を解決するか、
育成することも企業の役割である、と共に考えること。
 
そして伝えるべき人に、適切な手段で伝えていくことです。
 
生産者が、想いを込めて製品を作り、届けるべき人に届けるのと同じ。
採用においても、それは小さな経済と呼べるものなのかもしれません。
 
私は、右から左に人を紹介することはしたくありません。
基準や条件だけで、人を選ぼうとする企業に誰かを紹介してもしっくりこない。
 
だから、これからも人と地域をつなぐ仕事「づくり」をしていきたいと考えています。