就活応援記事に対する違和感

新卒採用広報活動が解禁になってまもなく10日。学生の皆さんは会社説明会への参加や、これから訪れるであろう面接準備に忙しく、また不安に思っていることでしょう。
 
そのような中、学生の皆さんを応援する記事も目につきます。
私も応援する気持ちには変わりありませんが、面接官として採用の現場に携わった者としては違和感を感じる内容の記事に出会うこともあります。
 
それは「ハウツー」の域を出ていないから。
対策を語ることで応援しているからであって、真の応援になっていないような気がするのです。
 
人事担当者はハウツーに基づいた回答はお見通しです。
だいたいこの質問にはこのように返ってくるな、というのが想像つくのです。
学生の皆さんにとっては想定通りの質問に対策通りに答えた形になり、人事担当者からすると、またその答えですね、ということになります。
 
企業は面接で何を「見る」か。
「聞く」ではありません。
就職活動を機に対策として勉強したことや、考えたことを「聞いている」のではありません。
これまでの学生生活を通じて、何を勉強していたのか、考えながら行動していたのか、を「見ている」のです。
 
「就活でよく聞かれるのは『頑張ったこと』『長所』『志望動機』」という記事がありました。
その通りです。
しかし、必ず聞かれるのだから勉強しておこう、考えておこうだけでは単なる対策です。
それだけでは面接対策という応援に過ぎず、就職活動を通じた今後の人生への応援にはならないと思うのです。
 
「『海外旅行や留学生との交流の中で、今まで自分が当然だと考えていたことが当然ではないのだということを知り、物事を複線的に考えられるようになりました』と言えれば立派」ともありました。
立派です、そこまでは。
そこで私ならこう質問します。
 
「自分が当然だと考えていたことが当然ではないとは、具体的にはどのようなことでしょうか?
 なぜそのように感じたのでしょうか?
 そのように感じて、あなたはどのような行動をとったのでしょうか?」
 
「『体育会に所属していたので、厳しい練習に耐え、気力と体力、忍耐力がつきました』で良いから簡単」という記事もありました。
簡単ではありません。
私ならこう質問します。
 
「なぜ厳しい練習が必要だったのでしょうか?
 厳しい練習の目的はどこにあると考えていましたか?
 どのように気力、体力、忍耐力を身につけたのですか?
 気力、体力、忍耐力をどのように活かそうと考えて行動しましたか?」
 
学生時代に考えながら行動していた人は(意識していようがいまいが)、しっかり答えられます。
しっかり、とは流暢にという意味ではありません。
つっかえつっかえでも考えたこと、やったことを話してくれます。
 
スポーツでもむやみにトレーニングするのではなく、科学的にトレーニングすることが主流ですよね。
そして試合の前に、相手の戦法や特徴を踏まえて対策を取りますよね。
それと同じです。
 
カーブ主体のピッチャーが相手だからカーブを打てるようにしておこう、の前に、
打者としての自分の課題を知り、克服に向けた練習を考え、実行する。
だからこそカーブに対応できる体になると思うのです。
 
難しい言葉で言えば「課題形成力」と「課題解決力」。
この二つを見ることで、行動特性を知り、会社が必要とする人財かどうかを人事担当者は見ているのです。
対策を聞いているのではないのです。
 
企業の採用基準は、その企業ごとに異なります。
センター試験のように点数で絶対的な評価がされるものではありません。
その意味では合否に一喜一憂することなく、自分にあった会社を探せばいいと思います。
 
そして就職活動の「対策」を通じて自分の行動を振り返り、特性を知り、今後の人生にも活かしていただきたいと思います。
それが私の応援の言葉です。
 
最後に。
面接での緊張をほぐす、という意味で目の前の面接官のことを「ダメな学生を採用して上司に叱られることを恐れているだけの末端係員と考えれば楽になる」という記事に対して。
例え話であることは十二分にわかってはいますが、不適切だと思います。
学生のこれからの人生に大きく影響を与える場に自分はいる、そのように自覚している人間が面接官になっています。
「厳しい質問をはしてくるけど、本当は自分のことを応援してくれている人」だと思って楽になってください。
 
万一、本当にただの末端係員に出会ったら、その会社には入らないでください。
採用の場にそのような人を送り込むような、人の人生を軽く考えている会社ですから。