何のために新卒社員を採用するのですか?

私は百貨店の人事担当として採用面接や、新卒社員が入社後は一貫してのキャリア形成にあたってきました。
また独立後の昨年は、情報通信系企業の2018年3月卒業の学生を対象とした新卒採用の企画から面接、内定に至るまで関わらせていただきました。
そして、現在は多くの企業の中途採用のお手伝いをさせていただいています。
 
いまのところ、今年2019年4月入社に向けた新卒採用には関わっていませんので、利害関係なく、直近まで採用に携わっていた者の生声をお伝えできればと思います。
 
学生のみなさんは自分自身の掘り下げを行い、すでにインターンシップに参加するなどして、きたる3月1日の採用情報解禁日を迎える準備をされていることと思います。
色々な情報を前に、不安でいっぱいの方もいるかと思いますが、就職活動にあたってやるべきことは大きく分けて二つ。WHYとHOWです。
 
WHY、あなたはなぜその業界、職種、会社を選ぶのか。
HOW、いわゆる対策です。
 
私が声を大にして言いたいことは、HOW(対策)に惑わされることなく、しっかりとWHY(なぜ)をつきつめてほしいということ。
具体的に自分自身を掘り下げる、「軸」をみつける方法はキャリアセンターや、就職支援会社のセミナーなどがありますので、そちらを参考にして頂ければと思います。
 
ここでは色々な企業の人事的な側面を見てきた立場からお伝えしたいことがあります。
それは、興味のある企業がみつかったら、「何のために新卒社員を採用するのか、その目的を確認しなさい。」ということです。
 
採用の目的は端的に言ってしまえば、大きく分けて2つです。
・社員数の確保、補充・増強など「数の確保」
・新たな人財が入ることで企業の新陳代謝を図る、成長につなげるなど「組織の活性化」
 
本来、この2点が密接につながっているべきであり、つながっていないとよい会社とはいえません。
とくに「数」でしか見ていない会社は要注意。
採用しても採用しても辞めていく、なぜ離職が止まらないのか根本要因を解決できていないケースがあるからです。
 
また人出不足の昨今、中途採用ではなかなか採用できないが、新卒一括採用ならば数が確保できるだろう、という会社もあります。
もちろん、企業にとっては採用のチャンスであり、その考えを否定するわけではありません。
採用の先に育成や定着、企業の成長の絵が描けていれば問題ありません。
しかし、その絵を描き切れていないケースが意外と多いのです。
 
BtoBであれ、BtoCであれ、顧客の支持を得なければ企業の成長はありません。
顧客の支持を得るためにどのような理念のもとに何をすべきか、それが経営理念であり経営方針となります。
その実践のために社員に行動してもらうわけです。
つまり新卒社員には、理念のもとに行動し、今後の顧客の支持を得て、企業の成長を支えてもらうことを期待することになります。
 
具体的な方策は顧客の新規開拓であったり、新製品の開発であったりしますが、すべては企業の理念のもとに行動すること。
この点が企業内部で統一されていないと、現場は売上至上主義になったり、開発点数を競うことだけに意識が向くなど、ときにガバナンスを失うこととなります。
 
ガバナンスが機能し、理念が浸透している会社であるならば、何のために新卒社員を採用するのかという問いに対し、企業の永続的な発展のために新入社員に期待する役割を答えてくれるはずです。
 
ガバナンスが機能せず、短期的な目標達成や課題解決に終始している会社では、例えば「売上○○億円達成に向けて君たちのような新しい力を必要としている」という答えになります。
一見、売上達成という目的があるように見えますが、それは目的ではなく目標にすぎません。
そして新卒社員を目標達成のための手段、駒としか見ていないことになります。
 
ぜひ、「何のために新卒社員を採用するのですか」と聞いてみてください。
直接聞くことが難しければ、会社のHPなどで企業理念を確認し、
会社の存在意義や、会社が社員に求める役割を導きだしてみてください。
その答えと、自分の中のWHY(なぜその会社?)が合致し、ストンと腹落ちすれば大丈夫です。
理系の学生のようにやりたいことが決まっているなど、専門職に就きたい場合でも同じです。
 
これから3月に向けて周囲のことも気になり、考える余裕がだんだんなくなってきます。
今のうちに是非、自分のWHYをしっかり見据え、そして企業の真の採用目的を確認しておくことをお勧めします。
 
最後に。
私がこのようなことを書くのは、昨年、まさに新卒採用の目的を見失った会社で採用数のみにコミットした採用活動を行なった後悔があるから。
学生の皆さんの参考になれば幸いと思うと同時に、採用手法に走っている近年の就活ビジネスに疑問を呈したいと思います。