地域の新しいプラットフォームとは

 したまち仕事舎の代表というよりも地元町内会の青少年部員として、地域文化をつなげていきたいとの思いから「脈々」というプロジェクトを同志とスタートさせました。
 これは文字通り地域の先輩方から脈々と、連綿と受け継がれている無形文化をつなげていくきっかけづくりの場です。新しく住まれた方と古くからお住まいの方、お互いの垣根を取り払い、新たなつながりを創ることを目的にしています。
 活動の柱は超町会、超新旧、超リラックス。立場を超えて、忌憚のない意見をビールでも飲みながら語ろう、ということで先日キックオフミーティングを開催しました。
 
 ちょうどお祭りシーズンに突入したこともあり、下町に引っ越してきたけれど、お祭りや町の行事にどう参加していいかわからない、きっかけがないという方を主な対象として、町の魅力や町会や青年会など運営主体の紹介、そしてお神輿入門初歩の初歩をレクチャーさせていただきました。
 私個人のキックオフミーティングでの目的は、町の行事に色々な方に参加してもらうにはどのようにすればよいのかを、主催者目線ではなく参加者目線で情報収集することでした。
 ところが実際はご参加いただいた方のほぼ全員がお神輿担いでみたいけど、どのようにすればわからないという方で、お祭りというものが下町の魅力、地域行事参加への強烈なフックになっているのだということをあらためて認識することになりました。
 
 では、お祭りがフックになるとしたら、その先の地域行事(納涼大会といったイベントに始まり、ラジオ体操の運営や防災訓練といったベタベタな活動まで)にもお手伝いいただくにはどうすればいいのか。
 今回のミーティングでは「緩くもしなやかな新しい地域コミュニティ」である「日本橋パパの会」からゲストをお迎えし、トークの中で色々と気づきをいただきました。
 
 ちょっと小難しく組織論を述べさせていただくと、「組織」には成立の必要十分条件があり、それは①目的、②貢献意識、③コミュニケーション、と言われています。町会であれば、行政の下部組織という役割を果たしながら(目的)、住民の交流の場としての機能も持ち(コミュニケーション)、町の役に立とうと思う人々が集合している(貢献意識)、ということになるのでしょうか。
 そして運営する人間の不足に悩む町会など既存の地域組織は、組織の継続に向けて貢献意識を植え付けるべく「町の役に立つことって素晴らしいんですよ〜」と、町やコミュニティの魅力を発信し続ける、いわば魅力の押し付けをしているのが現状なのだろうと思います。
 となると押し付けを嫌がる人はもちろんのこと、そもそも発信の仕方が間違っているケースも出てきます。「日本橋パパの会」の活動がそこに対する方向性を示すものではないかと感じましたので、ご紹介したいと思います。
 
◯コミュニケーションに対する考え方「参加のハードルは低く、広く」
 日本橋パパの会は、もともとは同じ保育園のパパ達の飲み会としてスタートしたそうですが、会費不要であることはもちろん、その他の参加条件もきわめて低く、中にはパパですらない人もいるそう笑。
 また、会の中で「部活動」を立ち上げることも自由で、ランニングやちょい飲み、そしてお神輿まで、パパ達が仲良くなるきっかけが作られています。
 これによりコミュニティ参加のハードルを大きく下げています。
 
◯貢献意識の醸成「ただより高いものはない」
 新たなコミュニティが活動を始めたとき、既存の組織からするとそこにただ乗りをする=フリーライダーとして警戒する向きがあります。
 その意識が新旧の交流を難しくする要因のひとつだと私は考えているのですが、日本橋パパの会は会費無料という中で、地域の店舗の利用や企業との関係性構築、ご寄付を含めた祭礼への参加などにより、地域で自由に活動できることの前提には地域社会の存在があることが自然に認識されています。ここは過度に意識をすると自らの活動を制約することになるので、おそらくメンバーの方々の高い意識がそのようにさせているのでしょう。
 
◯目的の維持「中立さを意識、コントロールする」
 パパの会というネーミングや、一方で部活動としての神輿部の存在など、時として会の立ち位置が特定の方向に規定されてしまう可能性があります。これも交流を阻害する要因のひとつになりかねません。
 日本橋パパの会は「緩くもしなやか」という言葉の通り、先人達の培った「日本橋」を次世代にどう繋げるかを夢とする=日本橋という土地ならではの目的、として意識することで、特定の立場に立たないようコントロールされています。
 
 これらは特定のリーダーがコントロールしているのではなく、メンバーそれぞれが自然と行動されているように見えます。おそらくそこには目的を共有する「緩やか」なリーダーシップの存在があり、会が「しなやかに」継続にするポイントなのだろうと感じました。
  
 「脈々」キックオフミーティングを終えて認識したことは、地域における新旧つなぐプラットフォームの必要性であり、その運営は自然発生的に参加ハードルを低くすべきであること、一方で地域ならでは目的を逸脱しないように緩やかなリーダーシップをとっていくことの重要性です。これにより周囲への最大の効果と影響を与えることができるように感じました。
  
「ブレずに楽しむ。だけど羽目を外さない。」
 
ここにどうしても「礼節」を加えたくなるのが古い体質の私ではありますが(笑)、
キックオフミーティングでの気づきを踏まえながら、今後も活動していきたいと思います。